「資源」と聞くと、どこか工業やエネルギーの専門分野の話のように感じるかもしれません。しかし実際には、わたしたちの食事、暮らし、働く環境のすべてが「資源力」に支えられています。資源力とは、その国が自前で生活を成り立たせる力とも言えるでしょう。
資源力とは何か
資源力には、大きく分けて次の三つがあります。
- 食料や水、農地などの生活資源
- 石油やガスなどのエネルギー資源
- 鉱物や木材といったものづくりの原材料
これらが国内にあり、安定して供給できる体制が整っていれば、国としての自立性が保たれ、緊急時にも柔軟に対応できます。
資源力が弱まるとどうなるか
資源の多くを海外に頼る状況が続くと、わたしたちの暮らしは見えないところで脆くなっていきます。
- 世界の情勢が悪化すれば、必要な食料やエネルギーが手に入らなくなる
- 海外からの輸入に頼る分、価格が跳ね上がり、生活費が圧迫される
- 電気やガス、インターネットの安定供給が揺らぎ、日常生活に支障が出る
- 自国で農業や漁業を支える人が減れば、安全な国産品が入手困難になる
- 安全性が不明な海外の食品や種子、農薬に依存せざるを得なくなる
- 外国資本に土地や水源地が買われ、自国のインフラや環境が外から左右される
- 経済、技術、防衛など他の国力も連鎖的に弱まる
つまり、資源が乏しいということは、「自分たちの暮らしを自分たちで守れない」ということなのです。
日本の現状
日本は資源の多くを海外に依存しており、現状は決して楽観できるものではありません。
- 食料自給率(カロリーベース)はわずか38%(令和5年度)。つまり、6割以上の食料を海外から買っているということです。
- エネルギー自給率は12.6%(令和4年度)で、9割近くを海外のエネルギーに依存しています。
- 一部の水源地や自衛隊施設の隣接地が、外国資本によって買収されているという報告もあります。
一方、実は海洋資源が豊富であるという調査もありますが、開発が進んでいないというのが現状です。 - 日本の領海や排他的経済水域(EEZ)は世界第6位の広さを誇り、300兆円を超える海底資源が眠っているという試算もあるほどです。
- 特に注目されているのがメタンハイドレート。これは日本人が100年使っても余るほどのエネルギー源になる可能性があるとも言われています。つまり、潜在的には「資源大国」になれる力を、日本はすでに持っているのです。
資源力を支えるもの
資源力を高め、活かしていくためには次のような要素が不可欠です。
- 国土(領土・領海)を守る力
- 海や山の資源を生かす技術力
- 資源開発や保全を進めるための経済力と政治判断
- 外国の不当な干渉から資源を守る安全保障体制(国防力)
資源とは、ただの「物」ではなく、わたしたちの生存と生活を支える基盤そのものです。その管理と活用を、今こそ真剣に考えるべき時に来ています。
WWⅡは欧米列強による植民地支配の恐怖と同時に資源を求めた参戦でもありました。
資源貧国日本は資源不足で大戦に参戦し、資源不足で敗戦し、今なお資源制約により他国による搾取構造に苦しめられています。
同時に復興と高度経済成長という成功の裏側にある日本最大かつ世界最大の資源こそが「日本国民の頭脳」です。焼野原からの復興はもちろんの事、公害問題という悲劇に見舞われつつも克服のための国民総力を上げての環境負荷を減らす脱公害技術開発、度重なるオイルショックにより世界的な不況の中で国民総力を挙げての省エネ技術開発を成功させ経済大国としての成長を成功させた歴史があるのです。
「今」の多種多様かつ自由な科学技術教育研究投資は「次世代へのツケの先送り」なんかでは決してなく、全く逆に「次世代への富の先送り」となると同時に、資源貧国日本に残された唯一の復興の道なのです。